忍耐の徳
何事にも辛抱強さというものは大事だが、近ごろはどうもこの忍耐の美徳とというものがおろそかにされがちで、ちょっとした困難にもすぐ参って悲鳴をあげがちである。
そして事志と違った時には、それをこらえてさらに精進し、さらに力を蓄えると行く気迫がまるで乏しくなり、そのことの責任はすべて他にありとして、もっぱら人をののしり、社会を責める。
これは例えば、商売で品物が売れないのはすべて世間が悪いからだというのと同じことで、これでは世間はだれも相手にしてくれないであろう。買って気持ちのよいサービスでなければ、人は誰も買わないのである。
だから売れなければまずみずから反省し、じっと辛抱をしてさらに精進努力をつづけ、人々に喜んで買っていただけるだけの実力というものを養わなければならないのである。
お互いに忍耐を一つの美徳として、辛抱強い働きをつづけてゆきたいものである。(松下幸之助)
売るとか買うとかの話でなくても、最近は「辛抱とか忍耐」とかはなくなりつつあるような気がします。